エルメスを知るための基礎知識
革の種類と金具用語、工房の基準
文:アリちゃん
はじめに|エルメスを語るための「共通言語」
こんにちは、アリちゃんです。
エルメスのバッグを語るうえで、「どの革を使っているのか」「金具の名前は何というのか」「工房ではどんな基準で作っているのか」 を知っておくことは、まるで共通言語を身につけるようなものです。
今回は、エルメスの代表的な革の種類、金具の正しい名称、そして工房の品質基準について、ひとつずつわかりやすく解説します。
これを読めば、あなたもエルメス通の仲間入りです。
PART 1|エルメスの代表的な革の種類
エルメスのバッグに使われる革は、種類によって風合い、耐久性、重さ、経年変化がまったく異なります。代表的なものを順に見ていきましょう。
1. トゴ(Togo)
| 項目 | 特徴 |
|---|---|
| 素材 | 仔牛革(カーフスキン) |
| 質感 | 軽いシボ(凹凸)が均一に入っている |
| 特徴 | 軽量で、傷がつきにくい。エルメスの中で最も人気の革 |
| 経年変化 | ほどよく柔らかくなり、ツヤが出る |
| 主な用途 | バーキン、ケリーをはじめ、ほぼすべてのバッグ |
アリちゃんの一言:初心者にもおすすめ。軽くて扱いやすく、傷も目立ちにくい万能選手です。
2. クレマンス(Clemence)
| 項目 | 特徴 |
|---|---|
| 素材 | 大人の雌牛革 |
| 質感 | トゴよりも大きなシボ。柔らかく、しっとりしている |
| 特徴 | 柔らかいため、大型バッグ(バーキン35/40など) に使われることが多い |
| 経年変化 | 使い込むほどに「ドレープ(布のような柔らかな表情)」が出る |
| 注意点 | トゴより重め。雨に弱いので注意 |
アリちゃんの一言:ふかふかした手触りが好きな方に。重さはありますが、その分「エルメス感」がたっぷりです。
3. エプソン(Epsom)
| 項目 | 特徴 |
|---|---|
| 素材 | 仔牛革に型押し加工を施したもの |
| 質感 | ハリがあり、シボが人工的に均一 |
| 特徴 | 型崩れしにくく、明るい色の発色が良い。汚れに強い |
| 経年変化 | ほとんど変わらない。ハリを保ち続ける |
| 主な用途 | バーキン、ケリー、エルメス、小物類 |
アリちゃんの一言:きれいな色を楽しみたい方、がしがし使いたい方にぴったり。お手入れも簡単です。
4. スウィフト(Swift)
| 項目 | 特徴 |
|---|---|
| 素材 | 仔牛革 |
| 質感 | なめらかで柔らかい。マットな質感 |
| 特徴 | 染料の吸収が良く、鮮やかな発色が特徴。傷がつきやすい |
| 経年変化 | 柔らかさが増し、少しツヤが出る |
| 主な用途 | 小物、リンディ、カラフルなバッグ |
アリちゃんの一言:色の美しさを極めたい方に。ただし、傷には優しく扱ってあげてください。
5. ボックスカーフ(Box Calf)
| 項目 | 特徴 |
|---|---|
| 素材 | 仔牛革 |
| 質感 | なめらかで光沢がある。クラシックな雰囲気 |
| 特徴 | エルメスの伝統的な革。ケリーセリエに使われる |
| 経年変化 | 使い込むほどに深いツヤが出る。傷はつきやすいが、それも味になる |
| 注意点 | 雨に非常に弱い。傷もつきやすい |
アリちゃんの一言:エルメス通の方にこそおすすめしたい、クラシックな一品です。「傷も味」と思える方に。
6. シェーブル(Chèvre Mysore / Chèvre de Coromandel)
| 項目 | 特徴 |
|---|---|
| 素材 | ヤギ革 |
| 質感 | 小さなシボと、しなやかな柔らかさ |
| 特徴 | 軽量で丈夫。内装(バッグの内側)によく使われる |
| 経年変化 | ほとんど変わらない |
| 主な用途 | 内装、小物、カードケースなど |
アリちゃんの一言:見えない部分にもこだわるエルメスの姿勢を感じられる革です。
7. バレニア(Barenia)
| 項目 | 特徴 |
|---|---|
| 素材 | 仔牛革(植物油で鞣したもの) |
| 質感 | しっとり、オイリーな手触り |
| 特徴 | エイジング(経年変化) を最も楽しめる革。傷もすぐに馴染む |
| 経年変化 | 使い込むほどに深い飴色に変化。独特のツヤが出る |
| 注意点 | 水に非常に弱い。雨の日は注意 |
アリちゃんの一言:「育てる楽しみ」を味わいたい方に。世界にひとつだけの色合いが育ちます。
8. エキゾチックレザー(希少な革)
エルメスを代表する特別な革たちです。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| クロコダイル・ポロサス | イリエワニ。最高級とされるワニ革。鱗に「^」マーク |
| クロコダイル・ナイルティクス | ナイルワニ。鱗に「••」マーク |
| アリゲーター・ミシシッピエンシス | アメリカアリゲーター。鱗に「□」マーク |
| オーストリッチ(ダチョウ) | 軽くて柔らかい。特徴的な「毛穴」がある。専用マークなし |
| リザード(トカゲ) | ナイルリザードは「—」、ウォーターモニターは「=」のマーク |
| パイソン(ニシキヘビ) | 大きな鱗が特徴。希少 |
アリちゃんの一言:これらの革には、それぞれ専用の刻印(素材コード) が打たれています。詳しくは「刻印完全ガイド」のブログをご覧ください。
PART 2|金具の名称と役割
エルメスのバッグには、それぞれに名前を持つ金具が使われています。これらを知っておくと、職人とのやり取りがよりスムーズになります。
| 名称(日本語) | 名称(英語) | 役割 |
|---|---|---|
| プレート | Plaque | バッグ正面にある、ブランド名が刻まれた金属板 |
| トゥルレ | Touret | バッグの開閉に使われる「ターンロック」金具 |
| クル・ド・セル | Clou de Selle | 「サドルネイル(鞍釘)」と呼ばれる装飾用の釘 |
| ポンテ | Pontet | バッグのハンドルや肩帶を通す「輪状」の金具 |
| リベット / スクリュー / ボルト | Rivets / Screws / Bolts | プレートやハンドルを固定する金具類 |
| 南京錠(パドロック)と鍵 | Padlock & Keys | バッグについている南京錠。鍵番号は01〜04 |
アリちゃんの一言:これらの金具のひとつひとつに、アリの店は正規品と同じ精度を追求しています。特に「クル・ド・セル」や「トゥルレ」の回転の感触は、使い心地を大きく左右します。
PART 3|工房の基準と品質管理
エルメスの工房には、いくつかの「絶対に守るべき基準」があります。
1. ひとりの職人がひとつのバッグを担当
エルメスでは、ひとつのバッグを最初から最後まで、ひとりの職人が作り上げます。
これは「ゼロディフェクト(欠陥ゼロ)」を追求するための姿勢。担当者が一貫して作業することで、細部まで目が行き届き、品質が安定します。
2. 使われる道具
エルメスの工房で使われる道具は、どれも伝統的なものばかりです。
| 道具 | 用途 |
|---|---|
| サドルステッチ針 | 手縫い用の針 |
| 千枚通し(目打ち) | 穴あけ用 |
| フランス式漉き刀 | 革の端を薄く漉く(すく)ための道具 |
| 研磨棒 | コバを磨くための道具 |
| 木槌 | 金具やコバを叩いて整えるための道具 |
3. メッキの厚み基準
エルメスの金具メッキは、0.2〜0.8μm(マイクロメートル) の厚みがあるとされています。この厚みがあるからこそ、長年使っても変色しにくく、深みのある輝きを保ちます。
4. 刻印のフォント
エルメスの刻印には、専用にデザインされたサンセリフ体(セリフのないシンプルな書体) が使われています。このフォントは「控えめでありながら、確かに存在する」というエルメスの哲学を体現しています。
まとめ|エルメスを深く知るために
いかがでしたでしょうか?
革の種類によって、バッグの性格がまったく変わる
金具のひとつひとつに名前と役割がある
工房の基準には、100年以上の歴史と哲学が詰まっている
これらを知ることで、エルメスのバッグが「ただ高いバッグ」ではなく、「職人と素材と時間が織りなす芸術品」 であることが見えてきます。
アリの店では、これらの知識をすべて反映させた完全再現のオーダーバッグをお届けしています。
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