エルメス金具刻印の秘密

1977年の機械彫刻機に隠された職人技

文:アリちゃん

 

はじめに|「あの刻印」はどうやって生まれたのか

こんにちは、アリちゃんです。

エルメスのバッグを手に取ったとき、金具に刻まれた「HERMÈS PARIS」の小さな文字。あの文字は、いったいどのようにして生まれているのでしょうか?

現代では、コンピューター制御のCNCやレーザーが主流です。しかし、数十年前のエルメス金具に刻まれた美しい文字は、まったく別の方法で作られていました。

今回、偶然にも1977年(昭和52年)的「New Hermes Engravograph(ニューエルメス彫刻機)」の操作マニュアルを手に入れる機会がありました。これは、かつてエルメスをはじめとする高級ブランドの工房で実際に使われていた機械です。

今回は、この貴重な資料をもとに、「コンピューターのない時代の職人技」 をひも解いていきます。

1. 机械雕刻机(Engravograph)とは|アナログ的精密機械

这个机械的名字是 「Engravograph(エングラボグラフ)」。直訳すると「彫刻を書く機械」です。

今でいう「コピー機」のような仕組みですが、コピーするのは文字や図形。而且「出力」是金属に直接刻まれた文字です。

基本構造

この機械には、大きく分けて3つの部分があります。

 
 
部品役割
母版(マスターコピー)刻みたい文字が書かれた「お手本」の型
描針(スタイラス)職人が手で動かす「なぞる針」
切削刃(カッター)実際に金属を削って文字を刻む刃

職人が描針で母版の文字をなぞると、切削刃がまったく同じ動きで金属を削る。これが基本の仕組みです。

2. パンタグラフ機構|「縮小して写す」驚きの技術

この機械の最大の特徴は、「パンタグラフ(縮小リンク機構)」 です。

どういう仕組み?

パンタグラフは、「描針の動きを、決まった比率で縮小して切削刃に伝える」 装置です。

例えば:

  • 母版に1インチ(約2.5cm) の大きな文字を用意する

  • パンタグラフの比率を 「4:1」 に設定する

  • すると、描針が1インチの文字をなぞると、切削刃は1/4インチ(約6mm) の文字を刻む

なぜこれが重要なのか?

小さな文字ほど正確さが求められます。 バッグの金具に刻まれる「HERMÈS PARIS」は、わずか数ミリの世界です。

このパンタグラフ機構があったからこそ、拡大した「お手本」を安全になぞりながら、極小の文字を正確に刻むことが可能になりました。

 
 
モデル対応倍率
I-M / MII / I-L / IL-K2.5:1 〜 7:1
ITF / ITF-K / ITX2:1 〜 7:1
IRX / IRX-K2:1 〜 8:1

 

3. 刃物と潤滑の「秘伝書」|素材ごとの彫刻レシピ

マニュアルには、素材ごとに使うべき刃物と潤滑油が細かく記載されていました。これはまさに、職人だけが知る「秘伝書」のようなものです。

 
 
素材使用する刃物潤滑油 / 冷却液
プラスチック類超硬(カーバイド)なし
アクリル・2-Plexハイス鋼(高速度鋼)なし
真鍮(黄銅)超硬 または ハイス鋼エングラボルーブ
アルマイトアルミ超硬 または ハイス鋼エングラボルーブ
ステンレス鋼超硬 または ハイス鋼エングラボルーブ
焼入れ鋼ダイヤモンドなし
貴金属(金・銀など)ダイヤモンドなし

注目したいのは「焼入れ鋼」と「貴金属」にはダイヤモンド刃を使うという点です。エルメスの金具の中でも、特に高級なものにはダイヤモンドで刻印が施されていたことがわかります。

4. 0.01mm的精度|深さ調節と芯出しの職人技

マニュアルには、「芯出し(センタリング)」 と 「深さ調節」 の手順が何ページにもわたって詳細に説明されていました。

芯出しの手順(簡略版)

  1. 母版(お手本)の中心に印をつける

  2. 彫刻するアイテム(金具)の中心に印をつける

  3. 母版の左半分だけをセットし、中心の文字を金具の中心に合わせて彫刻

  4. 左半分が終わったら、母版を右半分に入れ替え

  5. 中心の文字をもう一度合わせて、右半分を彫刻

这个作业を、すべて手作業で行っていたのです。现代的CNCのように「按钮ひとつ」では決してできません。

深さ調節

マニュアルには「深さ調節器で0.01mm単位まで調整可能」と記載されています。人間の髪の毛が約0.05〜0.1mmですから、その5分の1から10分の1の精度です。

この精度があったからこそ、バッグの金具に刻まれた文字が、指でなぞっても引っかからず、しかししっかりと目視できる絶妙な深さで仕上がっていたのです。

5. 現代との比較|アナログとデジタル、それぞれの良さ

 
 
項目1970年代の機械彫刻現代のCNC/レーザー
制御方法職人が手でなぞるコンピューター制御
精度0.01mm(職人の技量に依存)0.001mm以下(機械精度)
仕上がり微かな「手の跡」が残る完全に均一、無個性
再現性個体差あり完全に同一
温もりあるない

どちらが「正解」というわけではありません。

エルメスが今も大切にしているのは、「伝統的な職人技」と「現代の精密技術」の融合です。現代のバッグにはCNCやレーザーが使われていますが、貴金属製の特別注文品には今も手彫りや機械彫刻が残されていると言われています。

 

6. アリの店の刻印|伝統と現代の狭間で

アリの店では、お客様のご希望に応じて、この伝統的な機械彫刻の「味わい」 を再現することも可能です。

  • 现代的CNC刻印:完全均一で、シャープな仕上がり

  • 伝統的な機械彫刻風:微かな手の跡が残る、味わい深い仕上がり

  • 手彫り:職人が一文字ずつ打つ、唯一無二の風合い

「どちらの仕上がりがいいかわからない」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。お客様のご希望やバッグの雰囲気に合わせて、最適な方法をご提案いたします。

まとめ|刻印に刻まれた「時代」と「技」

いかがでしたでしょうか?

1977年の機械彫刻機のマニュアルから見えてきたのは、コンピューターのない時代に、人間の手と機械の精度を極限まで高めた職人たちの姿でした。

  • 母版をなぞり、パンタグラフで縮小する

  • 素材ごとに刃物と潤滑油を使い分ける

  • 0.01mm単位で深さを調整する

  • 左右半分に分けて中心を合わせる

これらの作業のすべてに、職人の「目」と「手」と「経験」 が詰まっていました。

エルメスの金具に刻まれた小さな文字。それは単なる「ロゴ」ではなく、時代を超えて受け継がれてきた職人技の結晶なのです。

アリの店では、この伝統的な技法への敬意を胸に、今日もひとつひとつの刻印に向き合っています。


【おわりに】
刻印の仕上がりについてご質問がある方、特定の年代風の刻印をご希望の方は、お気軽にWhatsAppにてお問い合わせくださいませ。

 

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